ダメだと分かっていたけれど。



「……もう、いいです……」


 もう、十分だ。

 先生の温もりは。


「そうか……」


 なんて、先生は言うけれど、全然離してくれない。

 離す気配すら感じない。

 1分くらい待ったけど、やっぱり離してくれない。


 それどころか、強くなってる気がする。


「あの……先生?」


「あぁ、ごめん。」


 先生は、ボケていたのか、あたしがもう一度言うと、簡単に離してくれた。


 自分で言っときながら、やっぱり離れると、寂しさが込み上げてくる。



「あのさ……ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」


「なんですか?」


 先生は、少しためらいながらも聞いてきた。


「小泉、お前好きな奴いんの?」


 今の言葉は、あたしには、可愛いって言われるよりも、もしかしたら嬉しいのかもしれない。


 ただ、一つ分かるのは。


「……へっ?」


 今まで生きてきた中で、一番驚いてしまったということ。



 思考が、完っ全に止まった。


 目の前には、顔を赤らめながら髪をぐっしゃっと崩している先生。


 これは、先生と生徒の会話じゃない。


 ……先生じゃない。


 もう、勘違いだなんて思えない。

 先生、あなたはあたしのこと、もしかして、好きですか?