ダメだと分かっていたけれど。




「先生……ワガママ言って、いいですか……?」


「えっ…?おう。」


「この前みたいに、抱きしめてください……」


「……あっ、うん……」


 先生は、あたしの無理なお願いを、受け止めて、抱きしめてくれた。


 あったかい……


「なんか、嫌なことでもあった……?」


 こんな時まで、優しい。


「ううん……今は、どうしても、抱きしめてほしかったのっ……」


 先生の、優しさに甘えたい。


  それだけだよ。


「そっか……」


 先生は、そう言うと、もっと強く抱きしめてくれた。


 胸の鼓動が、気持ちいい。


「せんせっ……」


 先生が、何を考えて抱きしめてくれてるのか分からない。


 ただの、同情。

 ただの、優しさ。


 でもね、それでも嬉しいんだ。


 大好きだから。

 叶わなくったって、苦しくたって。


「みーっけ。」


 この時はまだ、写真の存在も、シャッターの鳴る音も、もちろん、これから始まることだって、何も知らないまま。


 先生の温もりに、心を躍らせてるだけだった。