ダメだと分かっていたけれど。



 それってつまり、あたしと話したいってこと……?


 確かに、話したっちゃ話してたけど、そこまで話したこと、なかった。


 一言、二言くらい。


 だからって、先生がそんなに話したいって思ってたなんて……


「なんか、悩みとかないの?」


 先生は、心配そうに聞いてきた。


 なんで、先生は。


 あたしのことなんて、何とも思ってないくせに。


 そんなにあたしと関わろうとしたり、心配してくれるの……?


 あたしは、そのたびに好きになっていくんだよ……


「いけっち。」


「いけっち?」


「あたしは、いけっちなんて呼びたくないよ。」


 先生のあだ名。


 あたしは、特別でいたい。


 でも……


「呼ばなかったら、クラスで浮いちゃう。」


 まだ、先生って呼んで話したことなかったから、みんなは気づいてないけど。

 これから先、いつか気づかれちゃうもん。


「……いや、小泉はいけっちなんて呼んじゃだめだから。」


 えっ……


「な……なんで?」


「だって、俺も先生って呼ばれたいから……」


 先生は、下を向いてそう言った。


 でも、あたし、勘は鋭い方なんです。

 先生はきっと、嘘をついてる。

 本当はどんな理由かなんて、勝手に想像して、喜んでしまった。