ダメだと分かっていたけれど。



 その通りだったから、苦笑いで、認めた。


 あぁ……早く、放課後になって……!!




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 キーンコーンカーンコーンッ


 放課後を告げるチャイムが鳴る。


「やっと終わった……」


 いつもに増して、長く感じた授業。


 でも、やっとこれで……


「まだ、終わってねーよ?」


 後ろから、そんな声がした。


「先生!」


 待っていた、人。

 待っていた、声。


 すぐに振り返った。


 ちゃんと、後ろには数学の教科書を持った先生がいた。


「なんで、喜んでんの?そんなに数学好きか?」


 違う、先生が好きなんだよ。


「もし数学が好きなら、もっと賢いって。」


「そうだな。」


 普通の、生徒と先生の会話。

 でも、それがあたしにとっては、特別な会話だから。


 好意の相手に好きになってもらうにはアピれなんて言葉はよく聞くけど、あたしには絶対無理。


 ただ、こうした時間がほしい。


 叶わなくったって、100%好きになってもらえなくったって、この時間があれば、きっと大丈夫。

  そう、思う。