「…小泉……?」


 しばらく泣いても、落ち着きもしないあたしに、先生は心配して声をかけてきた。



 だめだ……


 悲しいのか、嬉しいのか。


 分からない感情が、涙となって溢れ出す。



「ねぇ……ねぇ、先生?」


「んっ?」


「先生には……彼女、いますか?」


 なに聞いてんの、あたし。


 いるなんて聞いたら、苦しくなっちゃうよ……


 いないなんて言われても、昨日見た『あれ』のせいで、嘘つかれたみたいで、嫌なのに……


 だから、聞いちゃいけないコト。


 なんで、聞いちゃったの……



「いないけど……」


 先生は、嘘をついた。


 生徒に彼女のこと聞かれて、素直には答えないと思うけど。



 やっぱり生徒だとしか思われてないことが、悲しくて。

 いくら生徒だからって、本当のこと言ってほしかった。


「う……そだっ……じゃあ、昨日、キスしてたあれは……!?」


「あれ……?」


 どこまでも、しらばっくれるの……?


 いくらなんでも、ひどすぎるよ……


「嘘つかないで……確かに、誰も通らない道だよ……?でも、あたしはいてたの、あそこに。」


 先生は、意味が分からないと言いたげな顔をしている。