あぁ、いつの間にかあたしは。

 あたしのために来てくれただけで、嬉しくって泣いちゃうくらい、先生が好きになっていた。



 一日でも、有雅を引きずらなくなるくらい、好きになっていて。

 どれだけ愛する時間が短くても、愛した深さは、深海ほど深くて。


 やっぱり、先生という溝に、あたしはどっぷりはまってしまっていた。


 何度考えても、好きな気持ちは変わらない。


 先生を好きな限りあたしは、あの、先生がキスしている映像を、何度もフラッシュバックしては苦しむんだろう。


 分かっていた。


 苦しむだけの恋だって。

 それでも、好きなんだ。


「せんせ……いっ……」


 あたしは、布団から飛び出た。

 先生は、あたしを見て驚いた。


 そりゃそうだ。


 だって、泣いてるんだもん。

 髪もぐちゃぐちゃ。

 いつもより汚い。


 あーあ、先生にはこんな姿見てほしくなかった。


 でも、でも、でも……


 どうしても、先生に会いたかった。

 先生を見たかった。



 思い切り、先生に抱きついた。


「小泉……っ!?」


 先生はまた、やっぱり驚いていた。

 でも、すぐに優しく笑って抱きしめてくれた。


「せんせっ、先生……」


 先生の腕の中。触れたかった温もりの中で、あたしは泣いた。