「蛍、聞いて?」



 瞬は、すごく悲しい声で言う。


 そして、俯くあたしの両肩を掴んだ。


「ご、めん……今は、無、理なの……」


 あたしの声は、想像していたより弱々しくて、涙声だった。


 ごめんね、瞬……


 頭が追い付かないの。


 小さいことなのに、混乱しているあたしは弱い。



 でも、今は瞬のどんな言葉も聞きたくない。


 傷つくかもと思うと嫌になる。



 瞬を信じられないなんて、思ってる自分が嫌い。



「……ごめんな、蛍。」



 瞬は、あたしの肩を掴む手をゆっくりと離して、弱い声で謝った。



 なんでか、あたしが嫌って言ったのに、離されるのが嫌なんて思っちゃう。



 瞬は、ゆっくりと後ろを向いてこう言った。



「今は無理でも、言い訳にしか聞こえないかもしれないけど、俺はお前しか見てないから。話したくなったら、なんでも聞くよ。」



 そこまで聞いて、あたしの頬に涙が流れた。


 それを隠すように、瞬の去っていく姿を見ないように、後ろを向いた。



「だから……気まずいとか思わずに、言いたかったらいつでも言って。待ってるから。」



 その声が、『待ってるから』という言葉が、胸に悲しく響いた。



 あたしは、パッと瞬の方に振り向いた。