なんかあったとは思ってたけど、まさか蛍が恋出来なくなる理由になってたとは……



 ってか、まず、恋を出来なくなってたとは……



『先生、あのね……中二のころ告られて、付き合ったの。最初は何とも思ってなかったけど、だんだん好きになっていた。なのに……』


『みちゃったの……ゆう、がが……浮気、してるとこ……』



 蛍は泣いた。


 悲しそうに泣いた。


 実花の気持ち分かるって言ったのも、もしかしたら……



 今は、蛍が帰ったところ。



 まさかのことだった。


 ……でも。




 実花の気持ち分かるってことは、俺が実花にした最低なことを経験したから?



 なら、俺といてたら蛍はまた同じ思いするんじゃ……



 そしたら俺は……



 だめ。


 こんなこと、考えるな俺。



「池谷先生」



 突然名前を呼ばれて、振り向く。



「あっ、桝谷先生」



「今度、飲みに行きませんか?」


 突然の誘いだった。


 行かなければ良かった。


「あー、はい。行きましょう。」