普通の生徒なんだけど、先生にそうは思われたくないっていうか……


 一人だけ、池谷先生って呼んだら、『特別』になれるかな?


 でも、みんないけっちだもんね、そう呼ばないとダメ?


「ちょ、ほた……蛍!!」


 考え込んでいたら、ふいに真心の声が聞こえた。


「んー、なにー?」


「なにって、後ろ、後ろ!」


 真心は慌てている。


 私は後ろを向いた。

 そこには……


「ぅお!せ…先生!?」


「さっきからずっと呼んでたんだけど?」


 さっきまで女子に囲まれていた池谷先生が、今度は女子の大群を連れて私の前で腕を組んで立っていた。


「あっ、えっと……なにか?」


 本当はものすごく嬉しいけれど、驚きでそんなものは吹き飛んだ。


「なにかって……元気か聞きに来ただけ。」


「……それだけ?」


「おう。」


 ……なにそれ。


 いきなりなんの用かと思ったら、元気か聞くだけって……


「呆れた。」


 でもね、元気か聞くだけのために来てくれて、とてつもない喜びが胸をいっぱいにしてるんだ。


「……元気です。」


「まあ、俺をバカにできるなら、大丈夫か。」


 そう言って笑うと、また先生は女子の大群を連れて帰って行った。