うるさいサイレンもまったく気にならなかった。

 気がつけば辺りに人だかりができていた。茎雄は現実に戻った。

 できれば戻りたくない現実だった。

 巨人に頭だけを食われ、道端に死体がある。

 茎雄は辺りをまた見回した。

 見る見るうちに人がいなくなった。もちろん警官さえいなくなった。

 柿雄だ。

「どうした?」

 と、茎雄は柿雄に言った。

「ママは?」

「それだ」

 茎雄は柿江の死体を指差した。