チュンチュンと、雀が囀ずる声に私はうっすら瞼をあける。

視界には見慣れない天井があり、高級そうなふかふかなベットの上であることがなんとなくわかる。

ビジネスホテルのベットではないのは確かだ。

ここはどこだ?

「う…。」

クラクラする頭を手で押さえ、何となく隣に目を向けると、私は頭が真っ白になった。

「な、」

「ん…」

隣には全裸の変態がそこにいた。
透き通るような白い肌に、長い睫毛が影を落とし、美しい鼻梁が日の光の中でくっきりと浮かびあがっている。

ふわふわな金色の髪は艶々していて、まるで天使の様だ。年は少年期から青年にさしかかる17か18だろうか…?だが、明らかに外国人だし、実際はもっと年齢が低いかもしれない。

美形も美形で、たぶんこの世でこの男ほど美しい芸術品はないだろう。

良くできた西洋人形に思わず固まっていると、私が起きたのに気がついたのか、男はゆっくりとその、瞼を開く。

「…ん…おはよー。」

「お、おはよう…ございます。」

思わず挨拶を返すと、男は金色の瞳を細めて、無邪気に微笑むと私の頬にキスをした。

私がピキリと体を膠着させると、男はいいこいいこと、宥めるように頭を撫でる。

その瞬間、昨夜の悪夢を思い出し、後退りすると、背中からベットの下へと落っこち、腰を強打した


「っ…」

「大丈夫?」

「…あなたは、昨日の…吸血鬼?」

敵意が無さそうなので、恐る恐る訊ねると、男はきょとんとさせると、へにゃりと笑った。

「…覚えててくれたんだ。うれしいな。」

「あ、いや…まあ、出来ればそこから動かないで下さい。」

ベットから起き上がろうとする全裸の男から視線を反らして、私は壁まで下がる。



「…何で逃げるの?」

「な、なんとなく?」

「ああ、昨日血を吸われたのが怖かった?それとも…キスされるのが嫌?」

「り、両方…です。」

思わず、正直に言うと男は目を眠たげに、こすると、のっそりと起き上がり、座り込む私の前に立って私を見下ろす。全裸で。

「っ!」

鍛えあげられた筋肉がついた見事なほどの裸体を惜し気もなくさらし、尚且つシーツで下半身を隠そうともしない男に私は頭の中で昨日の恐怖をぶり返し、体を縮めていると、バタンと扉が空いた音が聞こえた。


そちらに恐る恐る目を向けると、また見知らぬ男が立っていた。

メガネをかけたインテリ風のイケメンで…こちらは常識人らしく、きっちりとブレザーを着こみ、生真面目さが全面的に押し出されている。

メガネの男子生徒は、目を見開くと私と変態を交互に視線をむけ、その柳眉を逆立てた。

「フレッド、貴方は何をしているんですか?」

「なにって、お嫁さんとイチャイチャ?」

「な、よ、嫁!?」

先程よりも、さらに驚いたのか私に視線を向けると顔を真っ青にさせた。

というか、嫁ってなに!?

「どこがイチャイチャですか!?明らかに怯えているじゃないですか!というか、そこの部外者はどうみても男でしょう!!何を血迷った事を言っているのですか!偏食だとは思ってはいましたが…流石に容認できません!」

「ん~、多嘉嶺君。確かに俺が…偏食なのは認めるけど、この子、女の子だよ?しかも処女。」

「………は?」

メガネ少年は今度こそ動きを止めると、信じられないと言わんばかりに私を凝視した。