入学から2ヶ月後、あたしは無事に女子のサッカー部に入部し、先輩たちとも同い年の子とも仲良く楽しく過ごしていた。
同い年で、特に仲良くなったのが、クラスも同じの永倉友美。
友美は人見知りらしくて、声をかけたのもあたしの方だった。
始めは戸惑いがちだったけど、毎日話しかけているうちに、あたしには心を開いてくれた。
それ以来、あたしたちは毎日一緒にいる。
毎日が充実してて、サッカーも、どんどん上手くなっていくのを感じて、嬉しかった。
なのに……
起こってしまった悲劇が、あたしを奈落の底へ突き落としたんだ。
6月24日。
あたしはこの日、いつものように学校から家までの道を歩いていた。
あと少し、あと1回角を曲がればすぐに家に着くはずだった。
でも、あたしは角を曲がった瞬間、鈍い痛みを感じたんだ。
倒れる時に強く頭を打ち付けた。
意識が遠のいていく。
あたしが最後に聞いたのは救急車のくる音だった。

目を覚ますと、見馴れない天井。
病院だと分かり、すぐに事故のことが思い出された。お母さんはあたしが起きてすぐにお医者さんを呼びに行った。
それからお医者さんは来て後で重要なことを言うので応接室にいらして下さいと言って出ていった。
お医者さんの名前は諸星さんらしい。
お母さんと一緒に、準備をしてから応接室へと向かった。
諸星先生はあたしたちを見て、
「どうぞ、おかけ下さい。」と椅子を引いた。
あたしは平静を装っていたけど、本当はすごく怖かった。
重要なことというのがどんなことなのか、とても不安に感じていた。
でも、聞かなきゃ何も分からないと思って、諸星先生に思いきって聞いてみた。すると…
「赤峰さん。今回の事故であなたは足の機能が著しく低下しています。沙織ちゃんでしたね?沙織ちゃんはサッカーをやっていると聞きました。普通の生活はできます。しかし……サッカーは無理です。体育の授業もそんなにできないでしょう。」
そう言った先生の言葉が頭の中をぐるぐる回る。
あたしの中でサッカーは生き甲斐だった。
対して取り柄もないあたしの唯一の特技がサッカーだった。
サッカーをやっている間はどんな嫌なことも忘れることができた。
サッカーがあたしの全てだったんだ。
気付けば涙を流していた。自分を落ち着かせることで精一杯だった。
それから4日後、あたしは無事退院した。
でも、素直に喜ぶ気にはなれなかった。