カラン、カラン。

店のかわいい鈴が鳴る。

「いらっしゃいませー」

白いバンダナをしたおかっぱの橋本和(はしもと あい)は、

ケーキ屋の売り子らしく、愛想よく言った。

「あの、クリスマスケーキの予約をしたいんですけど」

母子連れがやって来た。

もう十二月だ。

和(あい)のダンナ、橋本優樹(ゆうき)の作るケーキはけっこう評判で、

特にこの時期は大繁盛だった。

「ケーキ、ケーキ、嬉しいな♪」

「はい、ご予約でしたらこちらのサンプル7つの中からお選び下さい」