この季節の風が、目に見えるのなら、きっとこんな形なのだろうと思えるほどに
オフィス街を彩る街路樹のイチョウは
朝日に黄金色を反射させながら、微風にもかかわらず無数に舞う。

落ちた葉はカサカサと乾いた音を立てながら転がり、
時折、石畳の上を歩く私の足先にじゃれるように引っかかっては通り過ぎていった。


土曜日の朝。


オフィス街は平日の慌しさを忘れたように静まり返り、整然と並ぶビルは澄んだ冷たい空気と、刺す程に鋭い朝日に身を寄せ合って耐えているように見えた。

道行く人もまばらで、進む先を見ても誰かとすれ違う気配も無い。


その中を私と、三歩先を行く彼は歩く。

私は仕事へ。



彼はきっと気まぐれで。