私の可愛い泣きべそサンタ


さっきまで無口だとさえ思っていた彼女からのマシンガンのような攻撃に、三汰は手の平を静香に向けて、無言で停止を要求した。


「ちょ、…ちょっと待って委員長…。」


なに?と静香は怒ったように口を閉じる。

その口調とは裏腹な、どこか冷静な自分が、少し離れた所から話しかけた。

全く持って、自分らしくない。
何をそんなに必死になる必要があるの?

そんなもう一人の自分を無視し、どうにか彼に諦めてもらおうと再び口を開いた静香に、三汰は筋の通った矢を放つ。


「委員長、なんだか俺が行くの…止めたがってない?」


静香は意表を突かれたように体を固めた。

三汰は、意外と鋭い所をついてくる。

「委員長、いつも、なんかこう…、だいたいの事どうでもよさげじゃん。好きにすれば、私関係ありませんみたいな。

なのに…。

……なんかあんの?」

なんか、と彼は探るように強く発音する。

なにかあるの?

なにか、隠している事が。


「べ」


ボボボボボッ



別に何もない、と言いかけた静香の耳に、


聞き覚えのあるエンジン音が聞こえた。


静香は息をスッと止める。

ヤバい。

今は。

今はダメ。


「あれ?静香ーーーーーっ!」

ドでかいバイクが静香達の前で止まり、二人乗りの後ろの方が、前の男の腰に回した腕をするりと外した。

フルフェイスのヘルメットをぱさりと外したサクラが、長い髪をサラサラと風に揺らせて駆け寄ってくる。

満面の笑みで。

彼が恋い焦がれる、キラキラしたあの笑顔で。