「忘れて帰った人間がなんで、ここに居んだよ」

「携帯忘れたんで、わざわざ取りに来たんでんです」

「お前バカなんだな」


何故そこでバカがなるのかわからないが、それ以上突っ込むのを止めた。


この人に口ではきっと敵わない。


なら、ここはあたしが大人になろう。


あたしは自分を言い聞かせた。


「仕事終わったんですか?」

「あぁ」

「なら、送って下さい」

「ちっ、仕方ねぇから送ってやるよ」


始めに送ると言ったのは自分の方なのに、なんでこんな扱いを受けないといけないわけ?


しかも、舌打ちされたし。

あたしは前を歩き出した隼人の背中にぐちぐちと心の中で文句を言った。