「そうだね、輝。自分のことを見失いたくないね」


何故、そんなことを言ったのかわからなかった。


でも、そう思ったんだ。


人の温かさに触れて。


輝は離れて、「そうだな」と笑った。


それを見て、あたしも笑った。


営業スマイルとか、作り笑顔とかじゃなく、自然と笑えた。


「頑張りすぎるなよ」


ポンポンと優しく頭を撫でて歩き出した。


あたしも店に戻ろうとしたら、輝が呼び止める。


「今度はお店でお待ちしてますよ、お嬢さん?」


輝は営業スマイルであたしに言う。


「こちらこそ、またの来店お待ちしています」


あたしもいつもの営業スマイルで返してやった。


そして、今度こそ輝はキラキラと光るネオンの街に消えていった。