私、吉田さくら。
この春、美術で有名な私立高校に入学した。
もちろん美術部に入るため。
まあ正確に言うと絵にしか取り柄がないから。

今までただなんとなく毎日をすごしていた。
たまたま小学校6年生のときに書いた風景画が地域のコンクールで入選した。
それから中学校で美術部に入部し、ひたすら風景画を描き続けて、成績を残していった。
そして今の高校からの推薦でこの学校に入学し、今に至るわけだ。

ある日のこと、美術の課題で桜を描くということになった。
得意の風景画だ。
しかし、その日は曇で全く桜が映えない。
今日は描くのをやめよう。
そう思いながらも渋々校庭に歩いていった。

校庭ではいろいろな部活が練習していた。
が。
さくらは陸上部の短距離走に釘付けになった。
その中でただ一人。
清潔な短髪。足についたしなやかな筋肉。
ほかの人と比べて別に目立つわけではない。
だがなぜか、さくらの目はその男子に釘付けになったのだ。