そして校外学習の2日目。

「今日は山登りだって。私もう帰りたい。」
「まあまあ、あと1日だから頑張ろうよ。」

弱音を吐く千恵を横に私は村田くんを探していた。
だからと言って見つけて話しかける訳じゃないのに。
このときはただ、ひたすらに探していた。

同じクラスだから近くにいるはずなのにな...

そう考えているうちに山道はどんどん険しくなっていった。
初めは砂利道だったのが、大きい石も混ざってくるようになった。

「やばいよ、これ。」

目の前にあったのは自分の胸の辺りまである大きな石。
いや、もう岩だと言った方が正しいくらい。

列の前の方にいた男の子たちは何の苦もなく進んでいく。

「私、あれは無理だよ。」
「私も無理!...でも行くしかないよね。」
「え...はぁ。」

弱音を言っていた千恵が前向きになっていることに驚いた。
あと、現実を受け入れなくてはいけない事実に。

「じゃあ、先に行くね!」

え、千恵。
置いてかないでよ。

何て言えるはずもなく、千恵は岩に足をかけ登っていく。

私も行かなきゃ...
でもどこに足をかければいいの?

どこにかけても上手く力が入らない。
ここ?あ、違う。じゃあ、ここ?あれ?

「もっと右にかけて、手もちゃんと使った方が良いですよ。」
「えっ、と。あ、うん。」

優しく声をかけてくれたのは村田くんだった。
今まで男の子をそんな風に見たことがなかった私は簡単に恋に落ちた。

ここから先の校外学習ははっきりと覚えていない。
ただ村田くんを探していた。