「離して!」


「照れなくてもいいって。行こう?」


本当に照れているように見えるなら今すぐ眼科に行け。それとも病院送りにしてやろうか。


私の腕を掴む男をキッと睨みつけるけれど、「そそるー」なんてふざけながら笑われてしまう。



………だから嫌なんだ。


嫌味でも何でもない。私は普通の顔に生まれたかった。


美人なお母さんが、男前すぎるお父さんと結婚して、その子供の私は笑えるほど見事〝可愛く〟生まれてしまった。


特に意識していたわけではなかったけれど、あまりにも周りから「かわいい」「かわいい」と言われて育ったから、いつしか自分でも(私はかわいいんだ)と自覚するようになっていた。



だけどかわいいなんて、ちっとも良いことなんてない。

現に今こうして胸くそ悪い状況陥っているわけだから。


「っ、離して!」


「ふみちゃん?」