小川は分隊員全員の顔を見渡す。

「俺の責任でとはいえ、これからやるのは明らかな命令違反だ。下手をすれば戦術自衛隊をクビになる程度ではすまないかもしれない。故に強制はしない。俺の指示に従えないという者は、遠慮する事はない、ここで帰ってくれ」

「……」

もう一度、隊員達の顔を見る小川。

「どうした?気を遣う事はない、ここで帰った所で腰抜け呼ばわりするつもりはないし、誰も詰ったりはしない」

改めて隊員達の正直な本音を引き出そうとするものの、誰一人として帰ろうとする者はいなかった。

「俺は」

谷口が言う。

「小川分隊長の判断はいつでも正しいと思っています」

その言葉に、他の隊員達も頷く。

「……」

マットは憧れる。

これこそ、彼が理想とする部隊の隊長の姿だった。