豊田を庇うように立つ谷口。

闇の中、素早く視線を走らせ、弾かれた89式小銃の位置を確認する。

駆け寄るには近く、歩み寄るには遠い。

ほんの数歩の位置だが、その数歩は兵士にとっては銃を構え、発砲するに十分な距離。

迂闊に小銃を拾いに行けば、確実に撃たれるだろう。

一か八か、一気に飛びついて銃を確保するか?

それとも一旦攪乱の為の行動を挟むか?

谷口の頭の中で思考が巡る。