鉄の救世主Ⅲ(くろがねのメシアⅢ)

またマットの前に立ちはだかる、戦争経済という現実。

「綺麗事を言ったって、お前達だって兵士として戦争をし、愛国心だの平和維持だのの名目で引き金を引き、敵を撃つ。撃った相手が人間じゃないから、ディアボだからなんてのは言い訳だ…やっている事は俺達と変わらない。雇い主がアメリカかテロリストかの違いだけだ。お前達がやっているのも、ビジネスとしての戦争だ」

「……」

マットも、ジェフも、返す言葉がない。

職業軍人である以上、それは正論だ。

正しい戦争などない。

どんなお題目や理想を掲げた所で、戦争そのものは悪であり、戦争を仕掛けた者も、加担した者も、それによって利益を得た者も、全て悪だ。

その『悪』の一人であるマットが、どうしてゴーストを責められるのか。

「…別にお前さんを詰るつもりはない」

ゴーストは背を向けた。

「急ごう。立ち話するような場所じゃない」