酸素ボンベの呼吸音だけが響く。

水中ゴーグル越しに見る世界は、青ではなく鈍色の世界だった。

マットとジェフ、そして小川分隊の男性隊員四人は、ニューヨーク湾に潜水していた。

一般的な潜水装備に加え、防水処理を施した銃火器を所持した隊員達が、SDVで水中を進む。

SDVとは潜水兵員輸送潜水艇(Swimmer Delivery Vehicle)の事である。

SDVはパイロット、副パイロット各一名と潜水兵員チームおよび兵員の装備を、水中または陸上の目標へ輸送し、また撤収を行うのに用いられる。

パイロット、副パイロットは、普通は戦闘チームの一員を兼ねる。

艇内に呼吸用の圧縮空気を蓄えており、潜水兵員の活動可能範囲は、各員の空気タンクまたはリブリーザー(循環型水中呼吸装置)のみによる場合よりも大幅に拡張される。

SDVは主に極秘任務を、立ち入り制限区域(敵が設定した区域、または軍事行動が注目や敵意を喚起しやすい場所)で遂行する為に用いられる。