しかし、問題がある。

「麗華、無線の通信状況は?」

小川の問いかけに、麗華は首を横に振る。

相変わらず無線は通じない。

強力なジャミングによって通信妨害を受けているようだった。

これでは味方の地上部隊から支援要請を受けて攻撃を実施する為の通信機器、敵の正確な位置を把握する為の赤外線センサーやレーダー測距、そして、それらの情報をもとにして精密射撃を行う為の火器管制コンピュータなどを搭載しているAC-130Hも、その性能を発揮できない。

何よりAC-130Hからは、敵味方の判別が出来ない筈だ。

通常ならば通信機器によって地上の兵員が敵の位置などを知らせ、それをもとに攻撃するのだが、通信妨害されているのでは位置を知らせる事が出来ない。

「…折角あそこに航空支援が来てるのに…!」

悔しげな表情を見せる豊田。

と。

「93年のモガディシュの戦闘の時、夜間、MH-6リトルバードが米兵を取り囲む民兵を掃射するよう指示されたそうだ。しかし暗闇の為に敵味方の判別が困難だった。そこで米兵の場所をストロボで示し、それ以外の区域が掃射された。着弾による砂煙で米兵の姿が見えなくなるほどの弾幕にさらされたが、無傷で生還した」

父親から聞かされたのだろうか。

マットがそんな事を言った。