鉄の救世主Ⅲ(くろがねのメシアⅢ)

異常に殺気立った表情。

額に血管が浮き上がり、理性を失ったように涎すら垂らしながら向かってきている。

呼吸は荒く、極端な興奮状態である事が窺える。

戦闘前の戦意高揚状態とはいえ、あの興奮の仕方は不自然だった。

そして何より瞳。

遠目に見て分かるほどに、殺意を湛えた紅い瞳。

歩哨は知っている。

あの瞳は、現在世界中の紛争地帯で猛威を振るっている『ディアボ』の証だ。

…アメリカ軍輸送機の運んで来た食糧には、例のナノマシン兵器が仕込まれていた。

アル・シャバブのメンバーはそうとは知らずに経口から食糧と共にナノマシンを体内に摂取、結果として肉体をディアボに改造されてしまったのだ。

今、歩哨の目の前にいるのはアル・シャバブでもソマリア人でもない。

ただ殺戮衝動で動くものを殺して回る、残虐な兵器だった。