まだ私が小学1年生だった頃。

この頃はまだ他の子と同じ、いたって普通だった。
だけどある日、私のたった一人のお母さんに捨てられてしまった。
理由はなんとなくだけどずっと気付いていた。

「いつも泣いていてめんどくさいから。うざいから」

多分その時から私の耳は良くなっていたんだと思う。
だけど私は捨てられたには関わらず、毎日ずっと家の玄関のドアの前で土下座し、泣きそうになる眼を堪えながら、

「ごめんなさい・・・。私もう泣かないから。良い子にしてるから。だから戻ってきてよお母さん・・・」

と、ずっとこんなセリフを毎日繰り返していた。
でも母親はもう戻ってくる事は無かった。
その時からずっと一人。
クラスの子達にも私の耳を気味悪がって、近づこうともしなかった。
家に帰ってももう家で温かく「お帰り」と出迎えてくれる人も居ない。
誰も居ないその家はただ冷たい空気だけを漂わせていた。