「杏奈ー…」

「あっ…お疲れ。…テストどうだった?杏奈はね今までにない位の出来で…」

「…ククッ……」






この人…絶対わかってる…。





緊張でドキドキして…。

早口になってる杏奈の気持ちなんて…気付かれてる。


「…何よ…」

「いや…ククッ…別に。とりあえず落ち着けって事。ドキドキすんなよー…俺までドキドキが移るじゃん?」

「おっ、落ち着いてるもん!ってゆーか遥がドキドキするなんて嘘だよ」

「お前なぁ…。人を化け物みたいに思ってるな」




ハハッて笑いながらおでこを叩かれた。

緊張した心を溶かすみたいにいつもみたく振る舞ってくれる。





やっぱり優しい…。



前に…杏奈が初めて遥に想いを伝えた時。

俺なんて最低だよ?………遥はそう言ったよね。







最低なんて…、杏奈が決める事。

遥は最低なんかじゃないよ。


自分に正直に生きてるだけ。

もしその事で…杏奈の気持ちに答えられない事で、最低と思ってるなら。

そう思わせちゃってる杏奈の方が最低だね…。







「ところでさ…場所決めた?」

「えっ…?場所?」

「バカ、これから行く場所だよ。…決めてねぇの?」

「うっ…はい……」

「じゃあ…行くか」



杏奈の前をぐんぐん歩いて行っちゃう遥。

どこに行くかわからないのに、彼について行くだけで楽しい事が待ってるのがわかるの。

遥ってそういう奴。



ワクワク、ドキドキさせてくれる奴…。













「…えっと…ここは?」

連れて来られたそこは……





見るからに怪しい場所で杏奈1人だったら絶対に足を踏み入れたりしない店。


店内は壁も黄色くなってて、何だか男臭い匂いがした。


「ビリヤード…やった事ないだろ?俺最近はまってて琉晴と来てるからさ。…教えてやる」