遥の煙草の煙りが漂ってきた。



切ない歌を歌ったのは何でだろう…。

煙草の煙りを見つめる先には何があるの?




杏奈ね…、遥の隣に居るだけで息が止まりそうだよ。

右肩が焼けそうに熱い。



「喉渇いたから烏龍茶ちょうだい」


杏奈の烏龍茶を一気飲みして、


「コーラだと一気飲み出来ないじゃん!!」


…って笑った。



そんな笑顔…ずるっ……。



間接キス…って気にしないの?

この行為も無意識でやってる?




遥が口つけたストローに…、付着した水滴に…。



全てを愛しく感じてこのコップを持って帰りたくなった。


店員さんに洗ってほしくなかった。





「超歌ったね。」


外に出ると21時を少し過ぎた所。

テンション上がりっぱなしの詩衣が叫んだ。


会社帰りのサラリーマンとかスーツを着たOLのお姉さんが通り過ぎる。

忙しそうに歩く人にぶつからないように、人の波をかきわけて歩いた。


「っと、大丈夫かよ。」

遥に後ろから頭を小突かれた。

振り返ったら軽く笑われて目のやり場に困っちゃうよ。


そんな笑顔向けられると耳押さえてキャーってしたくなる。

自分が自分じゃないみたいな気持ち…。


遥は女の子をドキッてさせるのがうまいよね。
出逢って何時間かしか経ってないのに、杏奈なんて何回ドキドキした事か…。



「アン時間は…?」

「今調べてるよ。」

駅に向かいながら携帯で電車の時刻を調べた。


杏奈は学校までの通学時間が長いから、遅くても22時過ぎには出なくちゃならない。

どんなに通うのが大変でも専門学校に入れてもらう条件として、自宅から通う事ってのが第1にあったから。

入学させて貰えただけでも感謝しないとね。



「あー、やっぱり帰るの遅くなるから杏奈行くよ。
ごめん。」

あかりと詩衣に手を振って、最後に遥の方を振り向いた。


目を細めて笑ってる…。



どうしよう…。


好き…。大好き…。