個室に入ってメニューを手に取った。


「杏奈何飲む?ビール?」

「んー…」


ぺらぺらめくって飲み物のページを開いた。

確かに…、杏奈はお酒が好き。



でも相手があんまり飲めない人だと自分ばっかり飲む気にはなれないんだよね。

相手が遥じゃ尚更飲めない。


学生の時からお酒が苦手だったよね。
飲むとすぐに赤くなるから…。

極力飲みたくないって言ってた。







「俺も飲むからさ…。付き合っとけよ。」








一瞬、聞き間違いかと思った。

だって遥が自分からお酒飲むなんてありえないから。



「…あっ、注文いいですか?……っと、カシスオレンジと……」

「ちょっ、ちょっ、遥飲めないじゃん!!杏奈飲まなくても平気だよ?」




電話しながら杏奈の頭を撫でて、“大丈夫”って口だけ動かしてる。







あぁ……。

どうしてこんなドキドキするんだろ。


どうして…、今でも遥に気持ちが傾いちゃうのかな。







どうしてなんて疑問、自分でもわかってるくせに。

直視しないでいるんだ。






だって、怖くて。

また遥一色になったら、今度は本当に抜け出せない。