―ジリリリリリッ―








まだ太陽が昇る前…。

目覚まし時計を止めて時間を確認した。


AM5:30



ばあちゃんのお味噌汁の匂いが部屋の中に充満して、寝ぼけた頭が動き始める。

欠伸をしながら隣を見たらアユミがまだ夢の中にいて、その憎らしい寝顔に鼻を摘んだ。



「…んっ……ぬぐっ…んぐっ…」

「なんか許せない顔…。」



3/6、今日は杏奈の卒業式。

実家が遠い事とばあちゃんに袴の着付けを頼んでた事で、前の夜から泊まってた。


なかなか起きないアユミに飽きてきた時、ばあちゃんの味の濃い味噌汁が運ばれてきた。

本当いつ飲んでもしょっぱい味…。
でも、なんかホッとしちゃうんだよね。


前にアユミにそう言ったら、

「わかるー。しょっぱいんだけどこれ飲むとばあちゃんって感じするよね。」

って笑ってた。




ばあちゃんが用意してくれた朝ご飯を食べ終わってから、いつもの倍念入りに化粧をした。

いつもはしない色なんだけど、ピンクの袴に合わせてアイシャドーも薄いピンクにした。


鏡に映る自分を見たら、2年前のあどけなかった表情はなくて…。



自信に満ちた顔。







杏奈が頑張ったから…、学校生活が充実してたから今こんな表情が出来るんだって思えた。



淡いピンクの着物に紺の袴。

足元は黒の編み上げブーツにした。




こんな時でないと袴なんて着る機会もないから、少し嬉しかったりするんだ…。


時計を見たら電車の時刻が迫ってきてる。

ばあちゃんにお礼を言って、アユミにピースサインして家を出た。


頬に当たる風は冬の冷たさを無くして、新しい季節の風。

杏奈達の門出を祝うみたいな暖かさに、自然と口元が綻んだ。