「お前……ヘアショーどうやった…?」



頭をかいて欠伸をしてる。

本当は仲間を大切に想う気持ちが誰よりも強い人。


素っ気ない態度も琉晴の愛情だってわかる。

口では文句言いながら杏奈の弱さを支えてくれたよね…。






台所からポットの沸く音が聞こえて部屋の中が静かになった。



「…すごい……楽しかったよ…」


あの鳥肌が立つ空気もみんなの笑った顔も…。

忘れられない。




それに……










忘れられないのは…還奈ちゃんとの出会い。

還奈ちゃんに会ったらますます自分を嫌いになると思った。



でも……、逆だったよ…。


還奈ちゃんに会えた事で自分の弱さを乗り越えられた。


自分を好きになれた…。





「俺はー……アンの弱い所たくさん見てきたけど。お前…強くなったなー」





琉晴にそんな事言われると思わなかった。

意地悪ばっかりするけど杏奈の事…あかりと2人して心配するんだよね…。




「うん……エヘッ…ん……逃げてたのは…杏奈だった。遥の気持ちからも還奈ちゃんからも」

「…うん……」

「でもね…、杏奈が向かい合う事が出来たのって……やっぱり還奈ちゃんが素敵な人だったからだと思うんだー…」


遥の選んだ還奈ちゃんが笑顔の絶えない…皆に憧れられちゃう女性だったから。

嫌な人だったら…もっともっと嫉妬してた。

そうする事で…還奈ちゃんに妬みとか全部ぶつけてた。


でも……、好きにならずにいられない人だった。





さすが遥だと思った。

貴方の好きな人だと思った。


「まぁなー…、アンよりは断然可愛いわなぁ…」

「こらっ…一言多いから……」


琉晴の憎まれ口に消しゴムのカスを投げた。




意地悪な琉晴と素直じゃない杏奈で。

文句ばっかり言い合ってるけどさ…この心地良い関係が今までの出来事を物語ってるんだよ。


琉晴はもう…杏奈にとって、かけがえのない大切な仲間なんだから。