やっと……笑ってくれた。


遥の笑顔を失う位なら何だってやってやる。




杏奈は昔からそうだった…。

自分の感情で動いちゃう所があるから。


その行動で周りを巻き込んでいっちゃうんだ。



遥と居ると、教わる事ばっかり…。

自分がいかにちっぽけな人間か……、相手の事を思いやれないか…。





「杏奈……」

「…ん?」

「本当の笑顔ってさ…、何だと思う?」



煙草に火を点けて杏奈の方を見た。

薄茶色の瞳の中で彼に映る杏奈はどう見えてるんだろう…。


「俺はー……今の自分を全て受け入れた時、自分を好きになれた時に本当の笑顔になれるんじゃないかって思う」




本当の笑顔…。

誰もが嘘をつきながら自分を隠す手段を探してる。


笑顔って絶対に嘘を付けないから。

遥に教えられた大切な事。




「このショーが終わる時には杏奈も笑えてるかな…?本当の笑顔で…」


遥と最後に笑いたい。

やって良かったって笑いたいよ。



「杏奈なら出来る。俺が言うんだから間違いねーよ!」



背中をポンって叩かれた。

それだけなのに強さみたいな物が沸き上がってくる。


遥の中の溢れ出る気持ちが…伝わってくる。



いつもは…遥の1歩後ろを歩いてた。

でも今日は隣を歩いてみたんだ…。



遥と同じ目線で見る帰り道はいつもと違う道になる。


星の見えないこの都会の空も車の多い街も。



遥との世界は色を持つ。




遥がいないと毎日がモノクロで…。

遥がいないとこの胸の高鳴りもなくて…。


遥がいるだけで……笑顔になれるんだ。













何度でも言うよ…。



出会ってくれて……ありがとう…。