前を歩く遥が止まったのは、緩い曲がり角の先にある505号室。

さっきまで居た部屋。



廊下には誰1人歩いてなくて、部屋から聞こえる微かな笑い声だけだった…。





部屋に通される前に立ち止まったと思ったら、ドアノブに手を掛けたまま遥が振り向いた。


「何で連絡して来ねんだよ…。」



怒ってる風に見えるのは、心配してる証拠…?

あの…自動販売機の時もそうだったよね?



本当の遥の気持ちなんてわからないけど、杏奈の良いように解釈しちゃってもいいの…?

あの時と一緒でタケと居たからだって思ってもいい?



遥は…、杏奈を側に置いておきたいって思ってるのかな…。






「まぁ…いいけどさ。」



何も答えられない杏奈の代わりに力の抜けた声がした。

眉毛を下げて微笑む笑顔は…切なくて、狂おしい程ドキドキして。



杏奈の鼓動を速くする。






ドアが開いて部屋に入った時、ベットに横たわる足が見えたんだ。

さっきまで杏奈と写真を撮ってたベット。






どうしてあかりが寝てるの…?

すぐに顔に出ちゃう杏奈の頬っぺたが、少しずつ膨れてるのがわかる。


したくないのに心の中は嫉妬の闇で、喉の奥がどんどん苦しくなってくよ。











―ガタッ―



洗面所で物音がしたと思ったら、て遥がひょっこり顔を出した。




「風呂入るなら入っていいよ。」

「えっ、いいよ。大丈夫。」




ここは遥の部屋だもん。

いくら杏奈がバカでも、状況的にいけない事なのはわかってるよ。



あかりも居るし2人きりじゃないけど…。

お風呂はやっぱりまずい…よね…。