エレベーターを降りてからゆっくり皆がいた部屋に戻った。


行きとは違って心臓がドキドキしないんだ…。

あんなに鳴り続けていた音も今は正常な音を刻んでる。


ドキドキしてた恋の音はズキズキの音に変わってる。



痛む胸を撫でながら部屋のノブを回した瞬間……




嫌な予感がした。















―ガチャ―

―ガチャガチャッ―




「閉まってるし…。シャレになんない……」


部屋の鍵は閉められて何回鳴らしても誰も電話に出ない。

急いで出てきたせいで持ってきたのは携帯だけだし…。



廊下で話してすぐ帰るつもりだったから、ルームカードもお財布も全部部屋の中だった。


部屋から閉め出しされて遥との時間も失って…。

行く場所もないよ。








「確か……」


エレベーターの近くにソファーがあったのを思い出した。

寝床確保じゃないけど、今現在の杏奈にはそこしか居場所がないみたい…。



数分前は幸せの絶頂だったはずなのに…。


何だこれ。






こんな時でさえもしかしたら遥から連絡が来るかも…なんて。

携帯を握りしめちゃう。




鳴る訳ないのに…。

杏奈は彼女じゃないでしょ…。





「…やばい、やばい……」


涙が込み上げてきて急いで目頭を押さえた。


泣く理由なんてない。



だって、遥は1つも悪くない。








涙が零れないよいに廊下の先を見つめた。

誰かが歩く音がして目を凝らして見たら…。