本当に短いバネの髪は見た目以上に柔らかくて
光のぐあいか、少し栗色にも見える。


「この、頭突きとは、よくもやったな!
俺を怒らせたのが運の尽きだぞ。」


俺の上に乗り上げたバネの頭を押さえたまま
髪をくしゃくしゃかき混ぜる俺のわき腹をふいにくすぐり出すバネ。


あわてて身を離そうともがく俺を
いたずら好きな悪党顔で見下ろす小っこい頭と細い肩の後ろには
濃くて高い紺碧の秋空。


年齢を10歳割り引いたって恥じらう理由に充分なほど
草の上で犬がじゃれ合うみたいに、俺たちはただはしゃいで、
疲れたら寝そべって、取り留めのないくだらない話をして
いつのまにか落ちていたまどろみから覚めれば、空は、赤く染まり始めていて。


教室にいる時は5分さえ永遠に感じられるほどのろまな針は、
気づかぬ内に時計の上を3回半も回っていた。


「もう、夕方か。」


大きく延びながら立ち上がる体に着いてくる陰は
長く細く地面をなぞる。


今朝のバネの比じゃないほど草だらけになった制服。


コスモスが川からの風に
気持ちよさそうに首を揺らす。


宇宙の
そんなマイペースな姿が
なんだかとても、バネに似ている気がした。