「今朝はちゃかして悪かった。
本気で落ち込んでるのが分からなかったわけじゃない。
だが、笑えないユーモアだったと認める。
励まし方を間違えた。」


と、優等生は少しずれためがねを押し上げながら照れたような顔。


「別に気にしてない。」


おかしな奴らだけど本気で心配してくれていたようで
なんだか自分が情けなくて素っ気なく答える事しかできなくて
また少し自分がいやになった。


「これ、3時間目に授業にきた春日が裕吾に渡してくれって。
裕吾は寝ていたし、俺隣の席だから。」


と、他の3人に隠れて伊藤は机の下で俺の膝に何かを置いた。


「バネが?」


思わず聞き返したが
何の事か分からないと言う伊藤の顔にはっとして
バネじゃ通じないなと笑いが漏れた。


「いや、とにかくサンキューな。」


とりあえずそれだけ答えて
渡されたメモを隠れてのぞき見る。



宇宙を見に行こう。
土手で待ってる。



しわのよった進路調査票の裏に書かれていたのは
たったこれだけの分。


ボールペンで書かれた文字は女っぽい丸文字でもなければ角張った堅い物でもなく
伸び伸びと流れるようでいて、きれいで心地の良い形だった。