「おい、ゆう昼だ。
起きろよ。」


息がかかるほどの至近距離での耳元のささやきに目を覚ましたのは
昼休みに入ってからの事だった。


「うわ、篠原かよ。
変なおこし方すんなって。」


顔を上げると、目の前に迫った茶髪頭に
座ったままあわてて少し後ずさった。


「渋沢氏、篠原君が4時間目を抜け出して購買の限定メロンパンを買ってきてくれたのですよ。
食べてください。」


と、篠原とどことなくぎこちない視線を交わしながら
ぼさぼさ髪をさわって古川も言う。


「裕吾ちゃんはまじ愛されてるよなあ。
ああ、うらやましい。」


と、墨田も日に焼けた顔をのぞかせ白い歯をにっとみせる。


「そうそ、墨田なんて毎休み時間ゆうの寝顔のぞき見てほほえんでたぜ。」


「だって裕吾ちゃん今朝はひどい顔してたのに寝顔は幸せそうなんだぜ?
ってこんな発言したら俺だけ誤解されるじゃんかよ。
しのちゃんだって俺と変わらなかったくせに。」


とどつきあう篠原と墨田を眺めていると
俺の隣に立っていた伊藤が言った。