返事はなかったけど立ち上がり歩き出すと
鞄につけたキーホルダーのぶつかり合う聞き慣れた音で結衣がついてきている事は分かった。
下足場も廊下も階段も人だらけで
かなり早く家を出たのに、もういつもとたいして変わらない時間になっているのだろう。
2年のホームルームエリアに入るとちらちらと見られているのを感じたし
バネと一緒だったさっきみたいに気にしない事もできずに
視線に焼かれるように心に走る痛みをただ顔にださずに、余裕なふりしてやりすごした。
扉を開けっ放しの2-Bの教室に入りながら
のぞき見た廊下をうつむいた結衣が通り過ぎる時一瞬こちらを見て、
泣いている赤い目が見えた。
昨日の放課後みたいにきれいにほろほろと涙をこぼす泣き方じゃなくて
顔を上げずにがむしゃらに瞼を手でこするから化粧が取れてぐしゃぐしゃな泣き方。
半年間隣にいて
美しくない結衣を今朝初めて見た気がした。
「おーい、裕吾君。
浮気とは罪な男だねええ?」
重力が増したような重い気分を引きずったまま前方に目を戻すと
いつの間にか、見慣れた脳天気なにやけ面の男子に囲まれている。
鞄につけたキーホルダーのぶつかり合う聞き慣れた音で結衣がついてきている事は分かった。
下足場も廊下も階段も人だらけで
かなり早く家を出たのに、もういつもとたいして変わらない時間になっているのだろう。
2年のホームルームエリアに入るとちらちらと見られているのを感じたし
バネと一緒だったさっきみたいに気にしない事もできずに
視線に焼かれるように心に走る痛みをただ顔にださずに、余裕なふりしてやりすごした。
扉を開けっ放しの2-Bの教室に入りながら
のぞき見た廊下をうつむいた結衣が通り過ぎる時一瞬こちらを見て、
泣いている赤い目が見えた。
昨日の放課後みたいにきれいにほろほろと涙をこぼす泣き方じゃなくて
顔を上げずにがむしゃらに瞼を手でこするから化粧が取れてぐしゃぐしゃな泣き方。
半年間隣にいて
美しくない結衣を今朝初めて見た気がした。
「おーい、裕吾君。
浮気とは罪な男だねええ?」
重力が増したような重い気分を引きずったまま前方に目を戻すと
いつの間にか、見慣れた脳天気なにやけ面の男子に囲まれている。


