俺の体に押し当てた頭から洪水みたいに甘ったるい声があふれ出しているみたいだったけど
得意の視線の攻撃がないなんて初めてで
たぶんひどく傷つけたのだと分かり、その腕を力で引きはがす事にためらいを感じた。
「結衣、痛いから離してくれ。」
たぶん俺が結衣の待ち伏せを振り切って登校した事や、バネと二人でいた事に不安を感じ混乱している所に
俺が名前を呼ばずに保澄さんと言った事が、結衣の何かを壊すとどめをさしたのだ。
それぐらいは俺にも分かったから
さすがに声の調子までは暖かくはできなかったけど、今度は名前を呼んで言った。
するとはっとしたように
巻き付いた腕の力が抜け
うつむいたまま結衣が離れた。
「ごめんなさい。」
何だかんだ言っても常に他人の羨望を集めていただけある
泣いても笑っても拗ねても消えた事のなかったたぶん一種の自信みたいなきらめきが
この時の結衣には欠片もなくなっていて
なんとも言えない罪悪感が背中にのしかかるのを感じた。
「教室行こう。」
身を屈めて自転車に鍵をかけながら小さく深呼吸してから言った。
得意の視線の攻撃がないなんて初めてで
たぶんひどく傷つけたのだと分かり、その腕を力で引きはがす事にためらいを感じた。
「結衣、痛いから離してくれ。」
たぶん俺が結衣の待ち伏せを振り切って登校した事や、バネと二人でいた事に不安を感じ混乱している所に
俺が名前を呼ばずに保澄さんと言った事が、結衣の何かを壊すとどめをさしたのだ。
それぐらいは俺にも分かったから
さすがに声の調子までは暖かくはできなかったけど、今度は名前を呼んで言った。
するとはっとしたように
巻き付いた腕の力が抜け
うつむいたまま結衣が離れた。
「ごめんなさい。」
何だかんだ言っても常に他人の羨望を集めていただけある
泣いても笑っても拗ねても消えた事のなかったたぶん一種の自信みたいなきらめきが
この時の結衣には欠片もなくなっていて
なんとも言えない罪悪感が背中にのしかかるのを感じた。
「教室行こう。」
身を屈めて自転車に鍵をかけながら小さく深呼吸してから言った。


