SPRING ★ SPRING ★ SPRING

腕を引き寄せて自転車の後ろへ誘導する。


背丈だけじゃなくて行動や表情まで子供っぽくて
本当に同級生なのかと疑いたくなる。


「なあ渋沢。」


自転車の真横で立ち止まったバネが続ける。


「私は自転車に乗った事がないんだ。
これはどう乗ればいい？」


驚いて振り返ると
後輪の上の狭い荷台を指でとんとんとつきながら
首をひねっている。


「とりあえず普通にまたいで座れよ。「


「うん。」


俺の言葉に従い、また口を開くバネ。


「足はどうするんだ？」


あまり後ろに乗った事はないから少し考え
いつもの結衣のポーズを思い浮かべる。


「車軸のカバーにかけられるか？」


後ろでごそごそとした後
返事がある。


「うん。
手はどうする？」


「どこでもいいから俺に捕まっておけ。」


「うん。？」


ブレザーの背中を引っ張られる。


「進んで平気か？」


「うん。」


わくわくしたような緊張したような
少し堅い声が返ってきてゆっくりと走り出す。


そのまま少しずついつものスピードに戻し
土手沿いの道を進む。