「裕吾、一緒に帰ろう。」


ホームルームが終わると
隣の教室から飛び込んできた結衣が
俺の背中に抱きついて言う。


「悪いけど先帰ってて。」


目を会わせないように
わざとらしく配られたばかりの進路調査票に視線を落とす。


「ええ何でぇ。
あ、進路相談とか?
裕吾はもう決めたの?」


わざわざ机の前まで回り込んできて、彼女は俺の顔をのぞき見る。


「まだ全然。
だから考えないと。
結衣は?」


無表情のまま彼女が愛想をつかす事を願いながら淡々と答える。


「あたしは裕吾と同じ大学にする。
だから出す前に調査票絶対見せてよ。」


と笑いながら俺を縛る視線の攻撃。


「お前文系だろ。
同じ大学とか無理っしょ。」


どうして分かれたいと思ってる彼女と
示し合わせて同じ大学受けなきゃなんないんだよ。


思わずふてくされて返答したら
都合の良い勘違いしてやがる。


「そんな落ち込む必要ないよ。
総合大学なら色んな学部あるし大丈夫。
裕吾も私も私立大受験だもんね。」


と何でそうも嬉しそうな顔するんだか。


「まあ、進路の事はまだ考え途中だしそのうちな。
用事ないなら帰れよ。」