「なに?」
あたしはムートンとダッフルコートを脱ぎ、リビングに向かう。

「朝、行ってからのお楽しみって言ったでしょー?わかった?」
そんなこと言ってたっけ…。えっと…。
あっ!言ってたかも!
「わかんないっての!何がいいのの?」
藤谷くんのこと?美湖のこと?
美湖は良かったけど、藤谷くんは…最悪だった…かも。


「藤谷……なんとか!なんだっけ?」

藤谷、え?藤谷くん!?

「なんで…」
「いーから!」
泰樹もあたしの話を聞かない。

「涼太だよ?」

「そ!その藤谷くんは中学の時、3年連続学年一モテてたんだよー!」

…そういえば。今日も女の子達がキャーキャー言ってたっけ…?
「へ、へえ~」
あたしが上に行こうとすると、泰樹があたしの腕をギュッと掴む。
「なにっ?」
「姉ちゃん、さっき藤谷くんに抱きしめられてたでしょ!!」
泰樹はニヤニヤしながら話す。
「…っ?なんでー…?」

「さっき見た。」
…見られてたとか恥ずかしいっ…!
「あっ、あれはね!藤谷くんが…!」
「デキてるの?」

「デキてないしっ。」
ほんっと意味不明。も、寝よ~。夕方だけど…。
「もう寝るね。あ、泰樹!この話は内緒だよ」
「うん!」
口だけなんだよね~。いいのは。
どうせ話すんでしょ?
だから…、
「話したら…優里(ユリ)ちゃんに泰樹の恥ずかしい話、教えるからね」
優里ちゃんとは、泰樹の彼女。とても可愛くてすごくモテるらしい。告白したのはもちろん泰樹。
「やっやだやだー!絶対言わないから~!」
「はいはい。」

「じゃ、おやすみ~。」
「ん!」
手を振って2階にあがる。


「はぁ~!つっかれたー。」
ベットにダイブする。
「あっ!明日の準備しなくちゃー」