そんな想いを振り切るように、便箋の薪に鮮やかな火を移した。
11枚の紙から作られたそれは、摂氏1200℃の命を宿すまでには少しの時間が掛かった。
火種を下に向けた炎は、その面積をゆらゆらと揺れる危うさからは想像もつかないほどの早さで増やし、登り詰めていく。
陽射しよりも高温の熱を肌で感じ始めた頃、線香の束を火にあてた。
ぽつりぽつりと赤を吹き、線香すべてに火が回ったのを確認すると、その火を振り消し依然として勢いを増し続ける手紙と一緒に香炉に入れる。
のろしのような煙が迷いもなく空に昇る。
手紙だったものは香炉で広がり線香の燃えていない部分を焦がして灰になって消えた。


