四季。死に手向ける夏





無理に詰め込んだ便箋を引き出して広げると、見慣れた字で綴られる想いの掃き溜めがあった。


自分で書き上げたその悲しみを、もう1度こころに映す気にはなれなくて、封じ込めるように紙の束を幾重にも折り畳んだ。


またバッグに手を突っ込んで16の冬に貰ったアーマーZippoをポーチから探り当てる。

親指でキャップを弾き開けると、高い金属音が影法師に溶けた。

ホイールを回して着火する。

しばらく使ってなかったから点くか心配だったけど、ガードの中で小さく咲く火花はウイックに染みたオイルに正しく火を点けた。


オイルのあまいにおいに、キャメルのメンソールが吸いたくなった。


静けさに灯る灼熱の炎に、失くしてきたものを映してたくさんの声を聴いた。

どれもこれも大切にしたかったものだったから、遣る瀬無さに胸がしびれた。