まだ知らない愛。

地元のお祭りは神社で行われていて瞬さんのマンションからも結構近いので歩いていくことにした。
四人とも浴衣を着ていて歩くだけで注目と歓声を浴びている。そんな視線も全く気にせずに普通に会話している葵さんたち。

瞬さんに肩を抱かれて歩いていると
「なにあの子?」
「瞬さんの彼女ってあいつー?」
「たいして可愛くもねぇくせに調子乗るな」
「離れろよ」
などと批判の声が嫌でも聞こえる。
分かってる。
私みたいな人間がこんなにかっこよくて完璧な龍神の総長の彼女なんてふさわしくない。
俯いて歩いていると瞬さんの声が頭の上から聞こえる。
「前を向け」
「でも…」
「周りの目が怖いか?」
微かに頷く私の肩をさらに抱き寄せる。
まるでこの女は俺の女だと主張しているようだった。
「人間はみんな悪い奴ばっかりか?」
「…」
「お前の事をちゃんと見てくれる人間は、悪い奴だっか?」
そんなことない。
私に元気な挨拶をしてくれる龍神の仲間、葵さんや昴さん、大樹さん。
後ろからいつも見てくれていた翔と綺麗な綾芽さん。
…私をしっかり見てくれる漆黒の瞳。
私の頭の中で次々と出てくる人達はちゃんと、私のことを見てくれていた。