まだ知らない愛。

部屋の隅に置かれた全身鏡を見ると浴衣の裾の辺りには、凛と咲き誇る桜が描かれている。

瞬さんは一番桜が好きだと言った。
きっとこのデザインも瞬さんが考えたんだろうな…。
嬉しいじゃ足りないくらい嬉しい。
私に生まれてしまった罰を与えた母だけど
桜という名前をくれたことには感謝する。
こんなにも自分の名前を好きだと思ったことはない。

髪をアップにして瞬さんがくれた髪飾りを付ける。
軽くメイクをして部屋を出るといつもの四人がソファに座ってこちらを見ている。