瞬さんと付き合い始めて二ヶ月が経つ。
「おい」
「…」
「聞いてんのか」
「…」
「家帰って話すか?」
「ひぃ…ッ」
放たれる不機嫌オーラと鬼のような顔に小さな悲鳴が幹部部屋に響く。
昴さんは呆れたようにため息をついて葵さんは困ったように笑っている。
正座して横でガタガタ震えている大樹さんと私。
目の前に仁王立ちする瞬さん…ではなく、ただの鬼…。
事件は二時間前のこと。
今日は地元の夏祭りに行くことになった。
「花火上がる?」
「あぁ」
「かき氷ある?」
「あぁ」
「綿菓子!綿菓子ある?」
「あぁ」
初めての夏祭りに興奮を隠せない私に浴衣を着せながら答える瞬さん。
私が一人で出来たのは浴衣を羽織ることだけ。
その間は瞬さんに後ろを向いてもらっていた。
瞬さんはなんでも出来るんだなぁ…。
男の人が着付けできるなんてすごいと思う。
なんて関心してる時、ふと胸に感じる感触。
「やっぱでけぇな…」
「…瞬さん?」
「こんなチビなのにでけぇな…」
「あの…」
「お前身長いくつだ?」
「146ぐらい…じゃなくて!何してるの?!」
「あ?」
そう言って上目遣いで私を見てくる瞬さんの手は私の胸にあって…
「その手は、なんでそこにあるの?」
「ここ抑えとかねぇと胸元締まらねぇよ」
あぁ、なるほど…そういうことか。
うわ…自分だけ変なこと考えちゃって恥ずかしい!!
そんな私を上目遣いでチラッと見て笑う。
瞬さんを上からちゃんと見るの初めてかも…。
どの角度から見てもやっぱ綺麗だな…。

