まだ知らない愛。

もっと嫌味とかいっぱい言われると思っていたのに、恋敵のはずなのになぜか背中を押されている気がした。
「初めてよ、誰かが私にこんなことを言ってきたのは」
改めて勢いできてしまって、いろいろ言ってしまったことを後悔する。
「す、すみません…」
「あなたなら、いいと思う」
「え？」
「なんでもないわよ」
背を向けながら言った言葉。
それは聞き取れないくらいの小さな声だったけど私は確かに聞こえた。
『瞬をよろしくね』

追いかけてよかった。
ちゃんと気持ちを伝えれてよかった。
ちゃんと綾芽さんの想いを聞くことができて良かった。
綾芽さんの背中は、私が追いかけた時に見た背中よりも少し生き生きとした背中に見えた。