まだ知らない愛。

「おい、ちょっとこい」
それは私に向けられた言葉ではなく、椅子に座って外を眺めている翔に向けられたもの。
「ちょっ、瞬さん…!?」
いきなりの龍神総長の登場にクラスのみんなも驚きを隠せず唖然としている。

それもそうだ。
結局学校には間に合わず、教室に入った時には二時限目の真っ最中なのだから。
ヤクザのお兄さんは、なんとなく察して何も聞いてこなかったので余計に恥ずかしかった。
「…」
無言で席を立ち上がり、こちらに向かってくる今日も外見だけ暗い感じの翔。
「えっ、あの…」
昨日のこともあり、正直私は翔の顔が見れなくて戸惑うばかり。
そんな私をよそに無言で見つめ合う二人。距離は近くてその間でオロオロする私。
喧嘩?まさか喧嘩が始まるの?